2007年度第1回(2007年6月10日実施)
実用英語技能検定1級1次試験 講評
英検1級1次試験ご受験、大変お疲れさまでした。しばらくは体と頭を休めてゆっくりなさって下さい。梅雨時ではありますが、紫陽花などをご覧になって安らぎの時間をお過ごし下さい。そして次へ進むエネルギーを蓄えていただきたいと思います。それでは、今回の本試験の講評をお送りします。
今回の試験は直近の試験と比べても、出題傾向・難易度ともに大きな変化は見られませんでした。従って、合格最低点は前回の80点からそれほど前後するようなことはないと考えられます。
そこで、下記大問ごとの分析の結果、2007年度第1回英検1級1次試験の合格最低点は81点前後(113点満点)と予想いたします。
それでは、大問ごとに解説してまいります。
[1]単語問題
日本英語検定協会によると、英検1級とは「広く社会生活に必要な英語を十分に理解し、自分の意思を表現できる力」であって、「新聞・雑誌・一般文献などを読むことができる力」と審査基準が設けられています。今回の語彙問題もまさしくこの審査基準とおりに、英字新聞・雑誌に頻繁に出てくる語彙が多く出題され、大変実用的な問題であったと思います。
正解の選択肢だけを見ても、(1) arbitrary、(2) waning、(3) marginally、(4) mutter、(5) meager、(7) conjecture、(9) rife、(11) savor、(12) circumvent、(13) haven、(15) havoc、(17) coerce、(19) disparity、(20) footage、(21) lucrativeなどは、頻出する時事用語としても、英検1級受験者には、確実に知っておいていただきたい必須語彙でしょう。
『英検1級1次模擬試験コース』で解いていただいた問題の中からも数多く出題されていましたね。例を上げますと、(7)の正解のconjectureはSession 9 (4)の問題の選択肢4に出題されていて、noteに「推量、推測」とありましたので、全員正解していただけたと確信しています。(12)の正解のcircumventはSession 5 (3)の選択肢2にありました。「巧みに回避する」というnoteがつけられていましたので、この問題文にぴったりあてはまる語彙として選んでいただいたと思います。不正解の選択肢も含めて全部覚えてくださいと言い続けて本当に良かったと思っています。(16)の正解のallude to「ほのめかす、それとなく言う」はSession 4の(9)の正解で、allude to とtoもつけて覚えて下さいと申し上げました。これも全員正解していただけたと思います。(21)の選択肢1のtepidは本試験直前のSession 12 (3)の選択肢2で出題されたばかりでしたね。同じく(21)の選択肢3のsedentaryはSession 3 (5)の正解にありましたので、ここにはあてはまらないことが明白で、考える時間の短縮になったのではないでしょうか。(22)の選択肢2のhold outはSession 3 (12)の選択肢で、hopeもつけて「希望を抱かせる」という意味で覚えていただきました。(23)の正解のpluck upはSession 5 (13)の選択肢3にあって、「元気になる、勇気を奮い起こす」とnoteにあり、まさにどんぴしゃりの出題でした。(25)の選択肢2のcrack up「バラバラになる、頭がおかしくなる」はフルサイズ模擬試験のSession 7の(25)の選択肢2に、同じく(25)の選択肢2のplay down「軽く扱う」はSession 1の(13)の正解として覚えていただきましたが、この時は解説で一緒に play up 「〜を重視する、強調する」も申し上げたと思います。
[1] 語彙問題は25点満点中、20点は獲得できたことと思います。
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[2]長文空所補充問題
一つ目の“Countering Counterfeiting”は経済分野の話題で、文字通り『通貨(紙幣)偽造との戦い』がテーマです。
「かつて通貨偽造は、専門の技術者を使う大規模な組織による犯罪行為だったが、パソコンやコピー機の性能が向上するにつれ、急激に一般人による通貨(紙幣)偽造が増加してきた。偽造が難しい紙幣の開発が功を奏して一般人の紙幣偽造犯罪はほぼ収束したが、一方で、高度の技術力と資金力を持つ大組織による偽造行為が再び増え始めている」という内容です。
時間との闘いが避けられない英検1級1次試験では、問題本文のタイトルを見ていち早く内容を捉えることは大切です。そういう意味で、“Vocabulary is the power.”はすべての問題分野にあてはまることだと思います。このcounterfeit も実はSession 8の語彙問題の(2)の問題本文の中に出てきていて、foil counterfeiters「通貨偽造者の計画をくじく」というcollocation(連語)として申しあげたことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。
(26)、(27)は比較的容易に解答できたと思いますが、(28)は選択肢1の fail-safe という言葉で迷われたかも知れません。fail-safe は「絶対安全な」という意味ですが、(28)の後ろの部分を読めば他の選択肢を排除できますので、正解を特定することができます。「過去数年間で、きわめて洗練された偽造通貨、いわゆるスーパービルが出回っている」とありましたので、やはり、このあたりの文脈にあうのは選択肢1となります。
二つ目の“A Fresh Look at Licensing”は社会・文化分野の話題で、職業免許制度についての考察がテーマです。「職業免許とは、政府あるいは組織・団体によって発行される、一定の職業や専門家としての資格を認めるという証明書であるが、真の目的は、同業者による競争を減らし、後発の企業の成長を妨げることにある。免許発行のための資格試験も、当該の職業や専門技術に必要とされる観点から見て適切かどうかは疑問」という内容です。
いずれの設問も、カッコの前後の文脈から推測すれば、確実に正解を選ぶことができるでしょう。
(29)でのポイントは、(29) が含まれる文章の最初の“Yet”でしょう。その前の部分でlicensingの定義について述べられていますが、“Yet”(しかし)とあって、「本当のlicensingの目的は(29)です。」と続きます。その後の“by preventing too many new people from entering them.”に注目していただくと、同内容の選択肢2 “limit competition”を選んでいただけたと思います。授業で、逆接の接続詞には要注意ですと何度も申し上げましたので、しっかり正解を選んでいただけたと思います。
[2] 長文空所補充問題は2問合わせて、6点満点中4点は取っていただきたいです。
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[3]長文読解内容一致問題
一問目は自然科学の分野で、“A Barcode for All Life”というタイトルです。このタイトルだけからもある程度内容が推測できると思います。Session 10の内容一致問題の一つ目“A is for aardvark.”― 全生物の目録を作り研究者などに提供しようという試みについて ― と共通する内容でした。本文の文頭にいきなり見慣れない単語“Taxonomy”が出て来て戸惑われたも知れませんが、同じ文章のすぐ後に“the name given to the discipline of classifying biological organisms”とありますし、「分類法」とすぐには思い当たらなくて“taxonomy”そのままで先に読み進めても、正解を選ぶ際の大きな障害にはならないでしょう。
(34)選択肢3の“skills of classification using older methods” がまさしく“taxonomy” のことです。また、本文最後の“those students prepared to master traditional taxonomic techniques are themselves becoming an endangered species”「従来の分類法をマスターしようとしている学生(研究者)たちが減少しているのである」という部分が、この問題の正解の決め手になっています。
二問目は文化論です。“Leveling the Linguistic Playing Field”というタイトルで、「南アフリカは少数独裁主義から脱して、多様な民族と言語を同じように尊重する独自の文化を持つ国家としての道を歩み始めたが、ビジネスや教育の現場では、世界共通言語である英語を使えることの有利さが浮上してきた」という内容です。日本でも英語の重要性はたびたび話題に上りますので、内容理解が比較的容易な問題だったと思われます。
この問題は、全問正解も可能でしょう。
三問目は“A Prescription for Disaster”、医療・科学分野からの出題です。「TGN1412という試薬を摂取した実験ボランティアが、次々に重症の体調不良に陥った。通常は最初の摂取から数時間を空けて、被験者の反応を見ながら次の摂取をさせるが、TGN1412の実験では、数分おきに何回も摂取させたことが体調不良の原因と考えられる。この実験ではボランティアに対して一定額の報酬が支払われたが、専門家からは報酬を与えることに対する異議や、報酬額についての意見が出されている。TGN1412の事件は、製薬会社が新薬開発の経費を抑えるために、短期間での新薬開発を急ぐという問題を明らかにした」という内容です。
本文のパラグラフごとに、書かれている内容をまとめながら読み進むと、各選択肢の正否の判断が付けやすかったでしょう。
(39)の設問はシンプルなものですが、選択肢がちょっといじわるであったと思います。選択肢4は「今までほとんど大きな問題が無かったため、TGN1412の実験によって生じた特別な結果が強調されることとなった」という意味です。この内容は第3段落に書かれています。Simon Bestは「Phase 1 trial の段階で、この国ではそのように重大な(TGN1412が引き起こしたような)問題が起きたことはなかった」と言っていて、Ray Nobleも第3段落の最後で「TGN1412のように短期間(Phase 1 trial を開始直後)で実験を終了することになった薬はない」と言っていますので、これらのコメントに近い選択肢の4が正解となります。(38)、(40)、(41)は比較的解き易いと思います。ここは3問正解で良いと思います。
[3] 長文読解内容一致問題は3問合わせて、20点満点中14点〜16点は獲得して欲しいです。
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[4]英論文(エッセイ)問題
TOPIC:
Has modern society become too dependent on technology?
POINTS:
* Interpersonal communication
* Health and medicine
* Traditional skills and crafts
* Leisure activities
* Workplace efficiency
* Environmental issues
TOPICが「現代社会は科学技術に頼りすぎているだろうか?」という質問形式ですので、Introduction で YesかNo をはっきり呈示し、Body でその根拠を述べていく必要があります。Yes、Noのどちらかに意見を決めたら、YesならYesの立場で、NoならNoの立場で、ぶれずに最初から最後まで一貫性を持って書いて下さい。英検の英論文では、一方の意見が正しくて他方が間違い、という判断は一切なされません。一つの主張をいかにlogicalに伝えられるかが得点に大きなウェイトを占めます。どちらの意見でも、ご自身が「書き易い」方の意見を、分かりやすく書いてあれば、目標得点は確保できるでしょう。
今回は、ふだん、日常生活を送る上で感じる、技術(家庭用電気器具、交通手段、情報手段 etc.)の便利な点と不便な点を具体例として挙げることで、意見を裏付けることが可能で、比較的内容をまとめやすい問題だったと思われます。しかも、直前のSession 12 のTOPICが“Is face-to-face communication still important in the digital era?”で、今回のTOPICに関連の強い内容でしたので、余裕を持って書いていただけたのではないでしょうか。高得点を期待しています。
[4]Essayでは28点満点中20点は獲得しておきたいです。
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[5] Listening Part
全体的には、clear に発音されていて聴き取りやすかったと思います。ただ、Part 3 には留守番電話のメッセージが3問あり、特に (J) は口ごもった口調が混じっていて、聴き取りにくさを感じたかもしれません。
*Part 1*
特別に長い会話もなく発音も明瞭で、全体的には聴き取りやすい問題ばかりです。「3人の会話」は No.10 に出題されています。今回は、女性が2人、男性1人の会話ですが、女性2人の声の特徴がはっきりしていますので、混乱なくストーリーを追う事ができるでしょう。
Part 1は10点満点獲得も可能だったのではないでしょうか。確実に8点は取っていただきたいです。
*Part 2*
5題とも narration ははっきりしていて、スピードもさほど速くなく、聴き取りやすく、設問も素直に作られていました。
(A) は、“Chernobyl”と“Ukraine”の発音に馴染みがないと一瞬うろたえますが、日本ではそれぞれ、チェルノブイリ、ウクライナと呼んでいることは、“nuclear accident”が出てきたあたりで判断がつくでしょう。話のポイントは「チェルノブイリ原発事故の跡地にウクライナ政府が保護区域を設けた結果、事故によって失われた動植物が戻ってきた」「2人の研究者が、渡り鳥が放射能汚染の影響で変化した遺伝子を他の地域に広めてしまうかも知れないと懸念している」の2点です。
(B) の“palate”は「味覚」という意味です。「Robert Parker, Jr. は天性の味覚と歯に衣着せぬ解説によって、ワイン業界に新風を巻き起こしている」という内容です。
(C)は 経済分野の話題です。Key wordの“long-tail marketing”の意味を把握し、経済界の常識が、インターネットを利用する新しいマーケティング戦略によってどう変化したかを聴き取ってください。
(D)は、 登場人物に注意して、誰が何をしたかを正確におさえていく必要があります。
“Ilena Rosenthal”は、他の誰かの手で書かれた手紙をインターネットのサイトに掲示した人、“a certain doctor”は Rosenthal を defamation(名誉毀損)で訴えた人で、“the California Supreme Court”は彼の訴えを却下した、という状況設定でした。
却下の理由は、「インターネット利用者は、他人によって名誉を毀損するようなコメントを書かれたとしても、むやみに訴えることはできない」という1996年の法律に基づいたものです。しかし同時に、この判決では、被害者保護を考慮せずに名誉毀損を奨励することに繋がることに懸念を表明する旨の但し書きが付記されました。この裁判の行方に注目していたのが、“free-speech groups”です。
(E)は、 「大方の予想とは異なって熱帯雨林の面積が増加している」という内容です。複雑な展開はないので、興味を持って聴くことができれば容易に正解できたでしょう。
Part 2では10点満点中6点を取っていただきたいです。
*Part 3*
他の英語試験では見られない、英検独特の問題形式です。今回は、(F)、(H)、(J) が留守番電話のメッセージ、(G) はセミナーでの説明、(I) はラジオの案内、と Real-Life Situation らしい設定です。
(F) スポーツクラブのメンバーシップの種類を選ぶ問題です。4つの選択肢はそれぞれ、“Type W”、“Type Z”、“Type N”、“Type S”ですが、narration でまず聴こえてくるのは“Type F”です。焦らずに落ち着いて聴いていく必要があります。
(G) 娘にふさわしい私立学校を選ぶという問題です。選択肢には、学校名が見慣れない固有名詞で書かれていますが、その脇にメモを取りながら聴いていくことで、正解選びが容易になります。
(H) 簡単な暗算が必要で、比較的難易度の高い問題です。Situation にある予算額($100)とカレンダーの作成予定数(a dozen=12)を充たす条件を念頭に置いた上で、写真の仕上げ方法2種類(glossyとmatte)を区別して計算を行なう必要があります。
(I) ラジオでの劇場チケット販売の案内という設定で、やや早口で特徴あるしゃべりですが、Questionが単純なので、それほど迷わずに正解を選ぶことができるでしょう。
(J) 家の留守番電話に残されたメッセージを聴く問題です。同じ留守番電話でも、 (F)と(H) が録音されたメッセージであるのとは異なり、困った状況にある人が依頼の伝言を入れている、という自然さ、言い換えると聴き取りにくさがあります。声が小さかったり早口だったり口ごもったりしていますが、話し手の言いたいこと、意図をつかむように注意して聴けば大丈夫です。
Part 3では10点満点中8点を確保してください。
*Part 4*
今回の interviewee は“writer for a popular travel guide”です。聴き取りやすい発音と声質ですので、内容の理解はそれほど難しくないでしょう。模擬試験 Session 8 の interviewee が“travel book writer”で、旅行関連の本の特徴についてのトピックでしたので、今回の『Lonely Planet』の著者の話にもすんなり入って行くことができたのではないかと思います。
(26) は、interviewee がtravel guideとして情報収集をする際の困難な点を指摘する問題、(27) は、interviewee が進めている、ロボットに関する本の取材の上で、旅行のガイドブックを書く際の取材と異なる点は何か、という問題です。ともに確実に正解を選んでいただきたい問題です。
Part 4 の練習のための教材をいくつか挙げておきましょう。まず、BSチャンネルで火〜金曜日に放送されている『マクニールアワー』。subtitle がありますので、録音しておけば字幕を見ながらインタビューの聴き取り練習ができます。また、ケーブルテレビに加入なさっている方には、CNN-Jの『ラリーキングライブ』をお奨めします。様々なゲストを迎えてインタビューをしていますし、しかもこれにも subtitle がありますので、楽しみながらとても良いリスニング練習になります。
Part 4では2問とも正解、4点満点を取っていただきたいです。
以上、リスニング試験部分は、Part 1: 6〜8点、Part 2: 6点、Part 3: 8点、Part 4: 4点で、合計24〜26点は取っていただきたいと思います。
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[6]合格ライン
上述しました、正解していただきたい問題の各目標得点を合計しますと、82〜86点になります。
直近3回の合格ライン(80点、79点、80点)から考えて、今回の本試験の実際の1次試験合格ライン(合格最低点)は、81点前後と予想いたします。
皆様の合格を祈願して、うれしい結果をお待ちしています。
英検1級1次コース担当 田中 美智子
(2007年6月24日更新)
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