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通訳ガイド試験合格者の声
<2006年度通訳ガイド国家試験合格者からのメッセージ>


通訳ガイド試験合格者の声ふだん英語を使わない人が合格のために必要なこと

荒井 俊明さん(通学受講)
>>受講歴 通訳ガイド2次コース通訳ガイド2次直前セミナー

<免除制度を使って再挑戦>

 十数年前に英検1級に合格していました。この手の英語検定は級が上がるにつれ抽象度を増し、言葉本来が持つ日常的・身体的な側面から離れていく傾向があります。通訳案内士試験は、珍しくこういった側面にこだわった試験で、旧試験制度においても挑戦しましたが、日本事情への対策を疎かにしたため、2次試験で「能」について聞かれたとき、ほとんど説明らしい説明ができず不合格になりました。

 しばらく地方に勤務していたこともあって受験から遠ざかっていましたが、2006年度から1次試験の免除規定(私の場合、英語筆記試験の免除)ができたことを知り、現金にも再挑戦することにしました。

<3ヶ月だけの1次日本語筆記試験対策>

 英語筆記試験免除の私の場合、1次試験については日本地理・歴史・一般常識試験のみの受験でしたが、準備期間が3ヶ月しかなかったため、過去問と国交省のガイドラインをたよりに独学しました。後でCELの1次試験解説セミナーに出席し、他の方々の話を聞いたところでは、CELの1次日本語筆記試験対策のカリキュラムに沿って勉強したほうが、無駄なく最速で合格最低ラインに到達すると思いました。以下参考までに述べます。

 日本地理は一般地理・観光地理・統計の3要素からなると思います。統計は後の一般常識と重なります。一般地理については「調べ学習に役立つ日本地図」(成美堂)という小学生向けの地図帳で、地名・位置・地域の特色といった基本データを押さえていきました。統計は、試験一週間前になって「データブック2006」(学研)という、これも小学生向けの受験参考書を買い込んで詰め込みました。2005年度に工業関連が出題されたので、今年は農林水産業にヤマをはり、そこは当たったものの、一般常識の醸造業の問題では取りこぼしました。(CEL推奨の「旅に出たくなる日本地図」(帝国書院)に当該部分についての記述あり)観光地理は「国立・国定公園の旅」(JTB)を、写真を中心におおまかに眺めました。

 日本歴史は高校レベルの知識が求められます。私は「詳説日本史」(山川出版)を3回通読しました。南北朝が室町時代か鎌倉時代か(答え室町時代)もあやふやなレベルからのスタートだったので、一回目は地の文を重視してとにかく流れをつかむようにし、二回目以降は試験に出そうな個別データに注目し、三回目は経済史は軽めにして文化史に重点を置きました。記憶があやふやになりがちな、歴史的事件が起きたときの為政者の名前や、江戸の三大改革の違いなどは、教科書を行きつ戻りつして確認しました。ガイドラインから写真を使った問題が必ず出題されると思い、試験当日は直前まで教科書の口絵の図版を眺めていましたが、結果的にこれが大当たりでした。

 一般常識は茫漠として対策の立てづらい分野です。私はまず土台を作る意味で「7日間で基礎から学びなおすカリスマ先生の政治経済」(PHP)を読みました。これは日頃経済関連のニュースを耳にしても、その背景がいまひとつわからないという方におすすめです。続いて「史上最強の最新時事」(ナツメ社)という就職試験用の本で時事用語を確認していきました。普段新聞を読んでいるつもりでいても、案外思い違いや偏りがあるものです。自分としては科学関連が弱点だと思い、直前には力を入れましたが、昨年温暖化の問題が出たせいか今年は出題されませんでした。

 こう書いてくると順調に勉強を進められたかにも見えますが、実際は仕事や付き合いもあって思うに任せず、最後の一週間で泥縄式に形をつけたというのが実態です。また上記の勉強で試験の全範囲をカバーできたわけではなく(特に一般常識)、カバーできたはずの分野でも取りこぼしがあったものの、本番では消去法で正解にたどり着けた問題も何題かあり、地理はほぼ満点、日本史は9割、一般常識もなんとか8割の得点を確保することができました。

<過去十年間英語を話す機会のなかった私の2次試験対策>

 CELには連休明けの5月から2次試験の前日まで約半年間、2次試験対策コースでお世話になりました。勉強方法については試行錯誤しましたが、私の場合、予習は内容や語句のチェックなど軽めにして、復習に力を入れるというところに落ち着きました。これは完璧に予習をした場合に比べて、授業中の模擬面接の際の流暢さでは劣りますが、より本番に近い形で答えを組み立てる訓練になります。

 授業においては、Nativeの先生から、単純な文法・発音ミスはもちろん、日本人の理屈では正しくても実際はありえない英語も、その場で修正されます。これはライブの授業でしか得られない貴重な財産です。それらを踏まえ、2度3度と復習する中で、授業で扱った課題に対する自分なりの答えを練り上げていきました。CELの教材のすばらしさは、時間をおいて復習するたびに新しい発見のあることです(逆に言えば、初めの自分の理解がいかに浅かったかを思い知らせてくれることです)。その際に、江口先生とDan先生共著の「英語で語る日本事情」(JAPAN TIMES社刊)が大変参考になりました。

 日本事情はCELの授業でも数多く扱いますが、過去の失敗から穴のないように準備しました。私の場合、海外経験がなく、英検1級に向けて政治経済・教育・環境といった分野でスピーチの練習をしたことはあっても、基本的な動詞の多面的な用法を含めた英語の発想そのものが身についていないため、具体的な事物の説明となると、どう言葉を組み立てたらいいものか途端にわからなくなります。それは今後の課題として、短期的には受験勉強に徹することにしました。

 暗記については賛否両論あると思いますが、日頃日本文化と縁のない暮らしをしている私たちが「雅楽」についてその場で考えて英語で答えるなど土台無理な話であり、あらかじめ苦手分野について試験場に持っていける答えがある、というのは心強いものです。(「雅楽」についてはCELの「2次試験の気になる点すべて教えます」セミナーで前年合格された方から実際に本番の試験で質問された旨のコメントがありました)むしろ暗記の弊害は、内容を正確に思い出そうとするあまり、目の前の試験官とのコミュニケーションが阻害されるところにあると考えます。私は日本事情に関する質問の答えの7割を、「英語で語る日本事情」などから借用したフレーズを再構成して答えました。

 おそらく2次試験における最大の難関は、外国人から見た日本の慣習文化の特異性に関する質問だと思います。自分が日本人であるだけに、この手の質問にどう答えたらいいものか悩みましたが、結局、自分なりに想定した外国人の視点から日本をみた場合に感じるであろう「落差」に立脚すればいいのではないか、というところに思い至りました。本番の2次試験での最後の質問「日本人が嫌う(dislike)西洋人の特質(traits)は何か」の質問に対しては、CELの授業で扱った「日本人はassertiveでない」を裏返して「西洋人は時にassertiveである」いうところから答えを組み立てました。

 以上は十年間英語を話すことから遠ざかっていた者が、本試験も含めた半年間、日常の瑣事に追われる合間に、きわめて拙劣な英語で行ってきたものです。この試験に取り組むことで、合格後の今でも自分の英語に相当の改善の余地があることを痛感しています。それらを授業中丹念にひろいあげ、都度、的確な方向性を示していただいたCELの講師の方々には本当に感謝しています。

<2次試験で求められるもの>

 英検1級と通訳案内士試験はレベル的には拮抗していますが、求められる角度は明らかに異なります。英検1級は純粋に英語力を測る試験であり、特に2次試験においては、与えられたテーマに沿って自説を展開していく構築力が問われます。それに対して通訳案内士試験は、外国からの旅行者を案内していく中で、旅行者からの日本に関する質問に的確に答えることに重点が置かれます。前者がアマの到達点なら後者はプロのスタート地点と言え、合否の基準は国交省のガイドラインに詳述されていますが、CELで模擬面接を受けながら練習し、また実際に本試験を受験した立場から、合格最低ラインは下記3点にあると思います。

(1) 質問に対する答えが、特に外国からの旅行者の質問に対する答えになっていること。

(2) 英語として文法・発音がそこそこ正しいこと

(3) 態度に問題がないこと(明朗であれば尚可)

 昨今の2次試験は受験者の半数以上が合格する試験になっていますから、人に抜きん出る必要はまったくなく、そこそこであれば十分だと思います。特に重要なのが(1)です。個人的には(1)の要件をある程度満たして、初めて(2)(3)が評価の俎上に上がってくるものと思います。ペラペラなのに落ちた、たどたどしい英語でも受かったという話をこの試験ではよく聞きますが、その原因はこういったところにあるものと推測します。かく言う私も、本試験最初の質問「日本に温泉リゾートが多いのはなぜですか?」に対し「それは日本が太平洋を取り囲む火山地帯に位置しているからです」と答え、客観的には間違いではないものの、すかざず「ニュージーランドも同じ火山地帯に位置していますが、日本ほど温泉リゾートはありません。日本に多いのはなぜですか?」と聞き返され、そこで初めて日本の気候の特徴や風呂好きの国民性に言及しました。逆に言えば、答えがずれているときは助け船を出してくれますから、それに乗っていけばいいのです。

 (2)文法・発音については、外国からの旅行者を案内して報酬を得るプロの試験である以上、ミスは英検1級に比べて厳しくカウントされると覚悟すべきでしょう。かく言う私も、本試験3日前のCELの授業において、woodの発音を20分矯正されたうえダメ出しされ、前日の模擬面接ではwhen I was a childrenなどどやらかしていました。本番は夢中だったためどの程度のミスを犯したものかわかりませんが、鎌倉について説明するとき「12世紀から14世紀まで幕府の所在地だった」と言うべきところを「20世紀から14世紀まで」と答えてしまったことを後になって思い出しました。多少のお目こぼしはあるようです。発音・文法については最後まで諦めてはなりませんが、最後の最後は、コミュニケーションの妨げにならなければよし、と開き直るしかありません。(3)態度については、smile ,eye contact, gestureの3点を普段の練習のなかで心がけておけば十分だと思います。

 2006年から2次試験の最後に、日本語による質問が追加されました。私の場合「どういう心構えでガイドの業務にあたりたいと思いますか」というものでしたが、これは(1)hospitality(2)日本についての知識の充実(3)emergencyへの対応という答えを英語で用意していたので、楽に答えることができました。

<英検1級保有者でも有利にならない2次試験>

 このたびCELから試験結果の統計データをいただいて気づいたのは、2次試験に関する限り、英検1級保有者が必ずしも有利でないということです。1次試験において最もハードルが高いのが英語筆記試験であり、それを免除されている英検1級保有者の合格率が高いのは当然(CELによると英検1級保有者の1次試験合格率は71%、その他が13%)として、2次試験になると両者の間に有意な差が認められません(2次試験の合格率は、英検1級保有者66%、その他64%)。通訳案内士試験が純粋に外国語に関する試験なら、2次試験においても、地力で勝り対策に十分な時間をかけられる英検1級保有者が圧倒的に有利なはずです。事実がそれと異なるのは、この試験が、英語力を正確に測定するより、「外国からの旅行者の日本に関する質問」に答えることに特化したもので、1次の英語筆記試験を受験される方々は、おのずとこれに沿った対策をしているため、少しばかりの英語力の差であれば勉強の中身で逆転してしまっているためと考えます。

 英検1級と比べて通訳案内士試験は、英語のレベルが必ずしも高くなく、一次英語筆記試験のボリュームも少ないので一見やさしいように見えますが、記述・口述にわたる正確な運用を求められる点で、難易度はむしろ高いと思います。(通訳案内士試験のこういった特性については「語学で身を立てる」(集英社新書)P142において高い評価が与えられています)英検1級保有の方々も、最低限、CELの「1次英語筆記試験解説セミナー」には参加されることをお勧めします。2次試験対策を始めるにあたっての、大きな指針になるからです。

 2次試験については、最後に、直前期におけるアウトプット練習の重要性を強調したいと思います。直前期になると、とかく自分の欠けている点ばかりに目がいき、インプットに偏りがちになります。しかし2次試験は「答えてなんぼ」の試験です。その性格上、正しい答えを思いあぐねて口ごもるより、情報として多少不正確であってもその場のパフォーマンスに徹して「聞かせる答え」をしたほうが評価は高いはずです。闇雲にインプットに走るより、むしろ意識してアウトプットすることを通して、残された時間の中でどこからインプットすべきか優先順位が見えてきます。アウトプットはインプットの質を高めます。最後までアウトプットの手綱を緩めてはなりません。

 以上、10年間英語を話すことのなかった私の合格体験談が、これから通訳ガイド試験に挑戦されるみなさまのご参考になれば嬉しく思います。


本 物 の 英 語 力 を 養 う C E L の コ ー ス
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