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通訳ガイド試験合格者の声
<2003年度通訳ガイド国家試験合格者からのメッセージ>


通訳ガイド試験合格者の声 CELで学んで遂に達成「英語三冠」

西本 公一さん (通学受講)

<きっかけ>

 通訳ガイド試験は学生時代から気になる資格ではありましたが、教職に就いている私には現実離れした、実態のない存在でもありました。その資格の取得を考え始めたのは、今から10年ほど前のことでした。当時私は受験雑誌などに英文法に関する特集や大学入試問題正解などを書かせてもらっていました。自分の文章が本に載り、書店に置かれるのは何ともいえない快感でした。しかし、それらを見るたびに思うことがありました。自分はこんな偉そうなことを書いているけれど、自分の英語力ってそんなにすごいものなの?大学の英文科を出てから、仕事としての英語の研鑽は積んできたものの、世間一般で言われるような「英語ができる人」ではないのではないだろうか。そう疑問に思った私は、誰もが認める実証を求めるようになりました。当時読んだ松本道弘先生の著作の中に「英語三冠」という言葉がありました。それは、英検1級、TOEIC900点、そして通訳ガイド資格でした。この3つを取れば、誰が何と言おうと「英語ができる人」の仲間に入れるのではないか。そう考えた私は、まず英検1級取得を目標に、英語を一からやり直しました。当時の1級は英語の最高峰の名にふさわしく、とてつもなく高い壁でした。合格率4%台、二次はパブリックスピーキング。まず単語力の強化こそ必要と考えた私は、最初の2年間ぐらいは単語だけを徹底的に増やしていきました。その後は、”TIME”リーディングやリスニングも並行して行っていきました。二次試験に3度落ちたりして、結局英検1級を取るのに4~5年かかってしまいました。しかし不思議なことに、1級に合格したのとほぼ同時に、TOEICでも初めての900点超えを果たしていました。それが1998年のことでした。

<CEL入学>

 英検1級取得後は翻訳などの勉強をし、通訳ガイド試験に初めてチャレンジしたのは2000年のことでした。当時の私は、英検1級を持っていたこともあり、通訳ガイド試験を少々甘く見ていたようです。単語レベルも高くないし、試験時間は余裕充分だし、リスニングはないしなどと、まったくもって認識不足でした。一回で受かるだろうと、今考えると自分が恥ずかしいです。結果は2000年も2001年も一次試験不合格でした。なぜ受からないのだろう。何が足りないのだろう。そう考えた時、一つのことに気づきました。英検やTOEICと通訳ガイド試験は、出題形式において根本的に違うということです。つまり、マークシート方式と記述式の違いです。マークならば勘で当たることもあるでしょうし、大雑把な流れの把握で答えられることもあります。しかし、70~80%が記述式の通訳ガイド試験では、英文を一字一句正確に読む力や、日本語の正確な表現力が必要です。私に足りなかったのはまさにこの2点でした。わかった気持ちになるとは、結局何もわかっていないことなのです。これは簡単には受からないと思った私は、合格への近道としてCELに入学することに決めたのでした。江口先生には以前英検1級を教わったことがあり、その卓越した知識や授業のうまさは充分に分かっていました。江口裕之という『ブランド』で選んだわけです。こうして2001年の11月から週一回CELに通うようになりました。

<一次試験>

 CELの通訳ガイド第一次試験対策クラスでは江口先生手作りのオリジナル教材が使われます。本番の試験と同形式のきわめて実戦的なものです。しかもその内容たるや、本番の試験よりも難しく高度なものです。江口先生はよく「鉄下駄効果」という言葉を口にされます。普段重い下駄(難しい問題)で鍛えておけば、本番の下駄は軽く(易しく)感じられるということです。この教材を予習して、授業に臨み、家で復習すると、それだけで一週間が目いっぱいになるほどでした。多分この江口先生の授業についてきた人なら誰でも、英米の一流雑誌を読みこなせる力が付くはずです。私の場合、週によってはまったく手も足も出ない問題もありました。しかし、それを空欄のままで授業に出たら、本番でも結局空欄のままだと思います。わからないならわからないなりに、何とか正解に近づくような記述解答を書くことを心掛けました。CELの授業は、もちろん通訳ガイド一次試験突破が目標ですが、それを超えた本当の英語力の養成という意味でもとてもすばらしい授業でした。

 こう書いてくると、なんだかかた苦しく、厳しい授業のように聞こえるかもしれませんが、実はそうではありません。江口先生の話術のすばらしさは驚嘆の一言です。熊本でのミュージシャン時代から通訳ガイド時代の話。そして英検1級全国第一位になった話。記憶力を増すために、焼鳥屋のメニュー価格から時刻表までを覚えた話。試験当日の消しゴム3個必要説まで。硬軟とりまぜた幅広いトピックが飛び出します。

 こうしてCELの江口先生の元で2年間学び、一次試験はそろそろ受かってもいいかなぁと思っていたら、そのとおり無事通過することができました。

<二次試験>

 自分にとって最大の難関は二次試験でした。と言うのは、前にも書いたとおり、英検1級の二次試験では3度失敗した苦い経験があったからです。一次合格の通知が来るとすぐにCELの二次対策Intensive Classを受け始めました。これは、4人の生徒と1人のNativeの先生によって構成されるクラスで、生徒一人対先生一人による実際の二次試験に即した模擬インタビューを行うものでした。自分が答えを言っている時はもちろん、他の受講生の質疑応答を聞くこともおおいに役立つ勉強になりました。質問は旅行、ガイド関係から日本経済、政治、宗教にまで及ぶ幅広い内容です。英検とは違い即問即答ですから、質問されてから考えては遅いのです。どんな質問に対しても答えのポイントを英語で考えておかなくてはなりません。私は表に質問を、裏に答えの要点を書いたカードを150枚作り、時間を見つけては自問自答していました。もう一つCELでとても役に立ったことがありました。それは、二次試験の直前に行われた曽根先生の特別講義でした。曽根先生は二次試験を「ガイド派遣会社の入社試験と思え」、「I love Japan.の気持ちで答えよ」など、まさに目からうろこが落ちるアドバイスを与えてくれました。これは本当に出てよかったです。

 本番の二次試験はわずか5~6分だったと思いますが、まったくうまくいきませんでした。質問されたのは「ベッカム」「文化祭」「血液製剤によるHIV感染」「七夕」の4つでした。私は”David Beckham”が聞き取れず、第一問目から聞き返してしまい、その後は宙の上を歩いている気分でした。インタビュー室から出た時は、これで今年のガイド試験は終わったと思いました。

<第三次試験>

 二次試験は100%落ちていると信じ込んでいた私は、三次試験の準備などまったくせず、年に一度の充電期間を謳歌していました。ですから、10月15日に二次試験の合格通知をもらった時にはあせりまくりました。なにしろ三次試験まであと11日しかないのです。まったくなにもやっていない状態で。早速江口先生に電話したところ、来年受かればいい(二次まで受かると翌年は一次、二次が免除になります)という気持ちではなく、ともかくあと10日全力でやってみなさい、とのお言葉をいただきました。

 三次試験は日本語による設問で、「日本地理」「日本史」「一般常識」の三部門から成っています。問題は何と言っても「日本史」です。高校以来もう20~30年やっていません。CELからいただいた江口先生講義のCDを聞きながら歴史の流れを把握し、年号や人物を頭に叩き込みました。ともかく10月16日~25日の10日間は平均睡眠時間4時間、一日5~6時間のペースで勉強しました。「日本地理」では県庁所在地から、国立・国定公園の名称まで、すべて漢字で書けるようにすることから始めました。パソコンに慣れきった私は何と漢字が書けないことか。「一般常識」では中学生レベルの政治・経済から、貿易収支の中身やイラク戦争まで復習しました。三次試験はともかく暗記、暗記、また暗記の世界でした。本番の問題はとても難しかったです。三次試験終了後もダメだと思いました。結果が出てわかったことですが、例年80~90%合格する三次試験が、今年は61%だったそうです。今考えるとよく受かったものだと思います。

 しかし、三次試験を勉強しているうちに、自分の中で一つの変化が起こりました。あれほどいやだった日本の歴史がとても好きになっていたのです。特に文化史の中に出てくる仏像や社寺を実際に見たくなり、三次試験が終わった翌週にはもう奈良、京都を旅していました。中学の修学旅行以来の古都見物です。齢を重ねて、日本史の勉強をやり直してから改めて見る仏像には本当に感動しました。たぶん通訳ガイド試験の三次試験対策をやらなかったら、これら日本の美を再認識することはなかったと思います。

<今思うこと>

 12月17日、最終合格発表は国際観光振興会の事務所まで見に行きました。掲示板に自分の名前を見つけた時には力が抜け、頭が真っ白になりました。うれしさよりは満足感が強かったように思います。一次試験は積み重ねの力を発揮できたものの、二次、三次は紙一重の合格だったに違いありません。特に二次試験は、単に英語がうまいとか、答えが的確だとかいうことの他に、何かプラスアルファがあるように感じます。それが何であるか、はっきりとはわかりません。私より英語のうまい人はいくらでもいたはずですし、明るく好感度の高い人もたくさんいたはずです。もしかしたら、面接官が自分の「努力」を見て取ってくれたのかもしれません。努力だけはしたと思います。ベストを尽くしてやってきた気持ちが面接官に伝わったのかもしれません。通訳ガイド試験は英検とは違い、あと何点で合格かがわからない”all or nothing”の試験です。また、一次試験から最終合格発表まで半年もかかる長丁場です。ですからこれを乗り切るには気力、体力、集中力すべてが必要です。

 今こうして英検1級、TOEIC900点以上(今年4月のTOEICでは945点を出し、自己ベストを更新しました)、通訳ガイド資格の「英語三冠」を達成して思うことが2つあります。まず、何をやるにしても基本的知識に基づいた本当の英語力が必要だということです。それがあれば三つとも受かるのだし、無ければいくらやっても一つも受からないのです。それぞれの合格だけを目指した小手先だけのテクニックを得たとしても何にもなりません。もっと大きな視点で本当の英語力をつけてもらいたいです。ただ、本当の英語力と言っても実体のない、雲をもつかむようなものかもしれません。そこで、通訳ガイド試験とか英検などの道を定めて、そこから頂上を目指すやり方が必要になってくるのだと思うのです。第二に、この3つを成し遂げたことは、英語の終着ではなく始まりだということです。これから英語のプロとしてやっていくならば、今までの2倍、3倍、いや何10倍の努力が必要でしょう。毎年何十人という若者がプロ野球に入ってきますが、レギラーとして何年も活躍できるのはその内の何人でしょうか。柔道でも黒帯を取るまでは練習の延長でしょうが、その後は手ごわく大きな相手と戦っていかなくてはなりません。そこには終わりのない練習が必要です。今通訳ガイド試験の勉強を始めた人も、こうして資格を取った私も、まだまだ勉強は続きます。そしてお互い一番大切なことは「あきらめずに努力する」ことだと思うのです。みなさまのご健闘をお祈りいたします。