通訳ガイド(通訳案内士)2次試験レポート

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受講生22 男性

試験の様子

集合時間: 14:30~14:55
受験した時間: 15:30以降 (※実際に自分の番が回ってきたのは、16:10過ぎ)
外国人試験官 (N):白髪で太縁メガネをかけた紳士風の白人男性。50代か? アクセントは北米系と思われる。一方的に質問されるだけで、私の回答内容に関して追加質問されたのは、一度しかありませんでした。終始なごやかな表情で、時に私の回答内容に笑顔でうなずいたりと、非常に感じのよい方でした。
日本人試験官 (J):40代後半~50代前半ぐらいと思われる日本人男性。試験官Aによる質問の間、じっと静かに私を見ていました。私の回答をしっかり聞いてくださっていて、時折、私の回答内容に対して「うんうん」と大きくうなずいていたりして、「がんばれ!」と試験の間ずっと、声なき応援を送って頂いていたように感じました。

質問内容

(1)  What is Japan's climate like?
(2)  What are your favorite stories in Japanese history?
(3)  Are there any hot springs in Tokyo 23 ward?
(4)  How do Japanese people spend New Year?
(5)  What are differences between shrines and temples?
(6)  あなたが通訳ガイドになった際、常に心がけようと思う点は何ですか?

最初にドアをノックしたが、付き添いの試験監督から、ノックは不要ですので、中に入ってください、と言われた。部屋に入るとすぐに、Good afternoon! と大きな声かつ笑顔で、二人の試験官に向かってあいさつをした。
N: Good afternoon. Put your belongings on the right-side chair and have a seat on the left chair, please.
Thank you.

着席するやいなや・・・

J: Please tell me your name.

A: My name is XXXXXXXX.

J: And where are you from?

A: I live in XXXXXXXX, Tokyo.

N: What is Japan's climate like?

ここでいきなり質問開始。何てことない、拍子抜けするぐらい簡単な質問でした。しかしながら、何度か利用したCELのmock interviewでは、常に自分自身に関するwarm-up questionを1問はさんでから、質問に入っていくという形だったので、それに慣れ過ぎてしまっていたのか、非常に戸惑ってしまいました。とりあえず、「東京の気候を例にお話ししてもよいですか?」と外国人試験官に確認した後、次のように話し始めました。

A: Japan has four distinct seasons: spring, summer, fall and winter. Here in Tokyo, it is warm and mild in spring, rainy and then very hot and humid in summer, warm and comfortable like Today in September…????

fall (またはautumn)と言うべきところを、なぜかSeptemberと言ってしまいました。即座に訂正しましたが、ここまで緊張していたことに、自分自身で非常に驚きました。また、私の動揺は試験官にすぐに伝わりました。さらに、2時間近い待ち時間の間一言もしゃべれることができず、アメもガムも禁止されていたため、正直なところなかなか口が回りませんでした。飲料水を摂ることは許可されていましたので、水で時折のどを潤していましたが、トイレにも自由に行けない環境でしたので、口の中を湿らせる程度に水をふくむことしかできず、のどが非常に乾いていました。コホンと軽く咳をして、Excuse me. と一言言った後、

A: In winter, it is cold, but we don’t have much snow in Tokyo.

と最後まで何とか言いきり、質問への回答を済ませました。しかし、想像以上の緊張に、まだ動揺は続いていました。

N:  What are the differences in other areas compared to Tokyo’s climate?

東京を起点に、北(北海道)→日本海側(北陸)→南(沖縄)の順で、若干ラフすぎるかなと思いましたが、簡潔に回答しようとしました。

A: Going up to the North, for example Hokkaido, it is much cooler throughout the year and there are much more snow in winter. Tokyo is located on the Pacific Ocean side, but on the Sea of Japan side, the opposite side like Hokuriku, it is colder and we have much more snow, too. On the other hand, going down to the South like Okinawa, it is warmer throughout the year, but there are some rain showers…

非常に簡単な回答でしたが、緊張のあまり、途中でつかえてしまいました。そこで、試験官のお二方にも見えるようにわざと、左胸をトントンと右手の指先でたたき、「大丈夫、大丈夫」と、自分に言い聞かせ、緊張を解きほぐそうとしました。試験官からはひきつった顔に見えていたかもしれませんが、何とかスマイルだけは忘れないようにと、無理やりニコリと笑い、話を再開しました。

N: What are your favorite stories in Japanese history?

この質問を受けて思ったのは、「この緊張状態で、苦手な歴史物がきた! どうやってかわそうか?」でした。そこで、質問の意味は分かっていたのですが、あえて外国人試験官に 

A: Excuse me, do you mean my favorite historic literature?

歴史文学・小説のことですか? と少しとぼけながら、話のネタを考える時間を稼ごうと思いました。

N: No, historic events you like most.

という回答がきたので、Let me see… と考えるふりをした後、自分でも非常につまらないだろうなとは思いましたが、いまの自分が確実に話せるネタと言うことで、みなさまおなじみの明治維新(the Meiji Restoration)について話し始めました。

A: My favorite historic event is the Meiji Restoration that happened in 1868 because it’s considered the very beginning of modern Japan.

と切り出し、次のような点を含む話をしました。
・significant political and social changeであること
the Tokugawa Shogunate, the military government からEmperorへのpower shiftが起こったこと
・立憲君主制、constitutional monarchy as Emperor with its head になったこと
・industrializationが進んだこと
・神仏分離 separation of Shintoism / Buddhismが行われたこと
など、このような理由で、the Meiji Restorationは日本の近代化・工業化に大きく寄与したことから、my favorite historic event なんです、と回答しました。
試験官お二人とも、Nothing impressive. といった表情で、内容に関する質問はありませんでした。苦手分野だったので、聞かれた質問に対して、とりあえず回答をするという、完全に「守りの姿勢」でのぞみました。仕方ありません。一方で、ここでも回答の途中で、一度単語の言い直しをしてしまいました。しかし、話し終えた時点で、だいぶ口が回るようになっていました。

N: I'd like to go to hot springs. Are there any hot springs in Tokyo 23 ward?

この質問に対しては、まず、お台場の大江戸温泉物語(※江東区)を紹介しました。a kind of spa resort with restaurants and amusement facilities と簡単に説明しました。次に、同様の施設が後楽園(※文京区)にもありますと答えました。東京ドームが運営するラクーアのことを言いたかったのですが、とっさに名前が出てきませんでした。ここでも試験官から質問はありませんでしたが、外国人試験官は、私が落ち着きを取り戻した様子を見て、ニコッと微笑んでいました。大江戸温泉もラクーアも、Lonely Planet等の英語のガイドブックに載っていますので、無難な回答だったと思います。

N: How do Japanese people spend New Year?

A: Usually, family members get together at one home and exchange New Year greetings. They sip sake and have rice cake soup called Ozouni. Oh, I forgot to mention that sake sipped in New Year is called Otoso.

なぜか「お雑煮」と日本語入れてしまったので、あわてて「おとそ」を追加しました。

・・・They may receive many New Year greeting postcards called Nengajyo on January 1st because the postal system in Japan is very effective and efficient.

日本の郵便システムが優れているという話は特に要らなかったかなと思いました。

・・・For children, New Year could be one of their happiest time of the year because they can get money-gift called Otoshidama. And then, Japanese people usually go to shrine or temple to pray for the happiness and fortune for the coming year….(更に話を続けようとすると)

N: OK. Stop.

おせち料理については、すっかり頭から抜け落ちていました。自分自身、もう何年も伝統的なおせち料理を食べていない(我が家ではとっくの昔に、おせちを食べる習慣がなくなっていた)こともあり、まったく頭に浮かびませんでしたが、試験官からの質問やツッコミはありませんでした。

N: What are differences between shrines and temples?

A: Shrines are Shintoism and temples are Buddhism.

と切り出したが、どうもしっくりこなかったので、

・・・We say Shinto shirines and Buddist temples.

とシンプルな表現に言い替えました。そして、

・・・There are some differences between Shinto shrines and Buddhist temples.

と言った後、建物の違いと人々が訪れる目的の2点について話しました。

・・・For example, if you go to shrines, you will see Torii gates. A Torii gate is built of two pillars and two crossbars. Some of them are painted vermilion.

鳥居の説明をした際に、左右の人差し指を使って、タテの柱、横のクロスバーをジェスチャーで表現したところ、試験官が二人とも、「うんうん、いいよ、いいよ!」といった表情で、何度も深く頷いていました。最後の最後に来てようやく、普段通りに話せるようになりました。

・・・Also, the purposes of people visiting are different. Shinto shrines are mainly used for happy occasions, such as wedding ceremonies and Shichi-go-san.

ここでなぜ七五三と言ってしまったのかは、自分でもよく分かりません。おそらく、11月に明治神宮で見た七五三の光景が脳裏に焼き付いていたのでしょう。一瞬このままスルーしようかと思いましたが、これまでの外国人試験官とのやりとりから、後の質問ではフォローできないと考え、追加で説明を入れました。

・・・Oh, Shichi-go-san is a festival held in November to celebrate 7-year old girls, 5-year boys and 3-year children of both sexes, for their growth and happiness.

そして最後は、こう締め括りました。

・・・On the other hand, temples are mainly used for unhappy/sad occasions like funerals and memorial services.

質問はありませんでした。

J:  最後に、日本語で質問しますので、日本語で答えてください。あなたが通訳ガイドになったとして、どのようなことを心がけるガイドになろうと思いますか?

A: Hospitality(おもてなし)の精神が、最も大切だと思います。お客様みなさまに、常に100%、いや120%ご満足いただけるよう、おもてなししたいと考えています。しかし一方で、たとえば40~50名の団体様のツアーガイディングを想定した場合、お客様のバックグラウンドや興味・関心は非常に多岐にわたるでしょう。そのような環境下においては、非常に困難かもしれませんが、それでも100% いや120% お客様全員にご満足いただけるようなおもてなしをしたいという気持ちとそのための努力を忘れない通訳ガイドになりたいと思います。

正直なところ、事前に考えていた回答とはまったく違う文章が口から出てきて、自分でもびっくりしました。ここでも質問はありませんでした。

N: OK. Your interview’s finished. Thank you very much.

イスから立ち上がり、Thank you very much. と大きな声かつ笑顔で言った後、更に「本当に、ありがとうございました。」と言いながら深々と一礼し、退室しました。退室する際にも、Thank you very much. Have a nice day. と大きな声と笑顔で、最後のお別れのあいさつをしました。

試験を終えて

Nervousness is your enemy. と試験前日にmock interviewをしていただいたネイティブの方に何度も言われたのですが、まさかここまで緊張してしまうとは、自分でもまったく予想していませんでした。試験会場の独特の雰囲気に完全にのまれてしまいました。試験運営についても、再受験予定者の方から軽くお話は伺っていたものの、情報漏洩防止のためとはいえ、あそこまで厳しいものだとは正直想像していませんでした。

最初の質問でのつまずき、具体的には、話のスムーズさの欠如に関して、どのように評価されたかがポイントかなと思います。お客様からの各種質問に対する「反応力」は、通訳ガイドにとって非常に重要なコミュニケーションスキルであると、諸先輩方よりお話を伺っていましたので、スムーズさには欠けたものの、その後のリカバリーや、何とか最後まで食らいついていった粘り強さをプラスに評価していただければと願っています。

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