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CEL受講生の体験記

2015年度通訳ガイド(通訳案内士)国家試験合格者からのメッセージ


通訳ガイド試験合格者の声文化を通じた国際交流を目指して

齋藤 裕さん (通訳ガイドコース受講)

 

<通訳を介さないコミュニケーションこそ面白い>

 私は舞台が好きで、学生時代から古典芸能をはじめ、海外の演劇やオペラの台本を読むことがよくありました。また職場に入ってからは、仕事上でさらに海外の文献を読む機会ができました。

 そういう時に先輩からよく言われたのは、「必ず原文で読め」ということです。これは文献には翻訳者の解釈が介在するから、そればかり読んでいては原文のニュアンスが伝わらないことがあるからです。例えば、ハムレットの“To be or not to be, that is the question.”という有名な独白に関しても、どう理解するかは観客の視点により様々に解釈できるわけです。

 また海外のカウンターパートとの公式の会議では、通訳の方を介して行います。通訳の方々の巧みな翻訳技能にはいつも敬服しましたが、しかしこれとても伝聞であり、どうしても通訳の方の解釈が入ります。こういうときは直接話せたらはるかに早くて面白いのにと、とてももどかしく感じることが多々ありました。

 一方、通訳案内士という資格は承知していましたが、もともと語学は得意でなく、自分の力からは夢のまた夢で、まさか自分が試験に合格できるなどとは思ってもいませんでした。それでも、NHKの「ビジネス英語」は初めの頃から聞き続けていましたし、自分の到達点を測るため、TOEICの受験も毎年続けていました。また古典芸能を通じて、自ずと日本文化に親しみ、人のお世話することも好きだったおかげで、10年前からボランティアで都内のガイド(原則日本語)も務めさせて頂いていました。

 2014年に職場を退職する最後の年にTOEICを受験して、ふと気が付いたらなんと840点を超えていました。これは通訳案内士試験を受験しても良いということなのかと、自分でもとてもびっくりしました。仮にボランティアのガイドを続けるとしても、独りよがりでなく、きちんとした資格のもとに行う方が望ましいに違いありません。

 そこで早速に、英語筆記試験免除のもとで同年に初めて通訳案内士試験を受験したところ、1次試験は無事合格しましたが、2次試験で見事に不合格となりました。一般に通訳案内士試験を受験する方は、英語は得意だけれど日本文化は不得手という方が少なくないようです。ところが私はその反対で、日本の歴史や文化はひとまず理解しているが、英語を話す・聴くことはまだまだだよ、ということであったようです。

<2次試験対策は、付け焼刃では無理>

 そこで1次試験免除となる2年目のチャンスを生かし、話す・聴く力を補強するため、CELのコース説明会に参加しました。CELについては、江口先生の「トラッドジャパン」のテレビ番組を視聴していた頃から承知していました。しかしお話を伺って、2次試験対策として単に会話力を補強するだけは、底の浅い付け焼刃になってしまうことが分かりました。

 そこで本気で合格するためには、日本事情の基礎も含め、改めて知識を構築し直さなければだめだと考えました。かくして60の手習いとなりますが、老骨に鞭打って江口先生の日本事情コースVer.2?Ver.4とDan先生の2次試験対策コースを、ほぼ1年にわたりCELで受講させて頂きました。

<暗記ではなく、「何故」を考えさせる授業で実力アップ>

 歴史でも地理でも、江口先生からは結論だけでなく、「何故」とよく質問されました。これは教科書通りに結果を丸暗記するような学校の授業とは大きく異なり、とても新鮮で興味深い内容でした。それは学生時代ではまだ社会の仕組みをよく理解できず、職業人として経験を積む中で問題意識を深めた結果かもしれません。

 また歌舞伎を見たことがないというような初心者の受講生に対しても、江口先生は何とか良いところを見つけようと辛抱強く努力していただきました。私のように話したいことはあっても英文が出てこない受講生には、時々キーワードの示唆をいただきました。おかげさまで自信を無くしたり、動揺したりして、挙句の果てに脱落することにはなりませんでした。

 教材は、CELオリジナルに編集された充実した内容で、「フランス人シェフと日本人板前の違いは何か?」など、考えていくと奥深い多彩な設問があり自問自答を繰り返すことができました。もとより授業では何度もマイクが回ってくるので、寝ているわけにはまいりません。かくして週1回2時間の授業の予習・復習に、残りの6日間かかりました。おかげさまで老犬もしっかりと芸を覚え、知らず々のうちに力を蓄えたと思います。

<2次試験対策で役立った様々なアドバイス>

 2次試験対策では、曽根先生から、プレゼンは情報の羅列で構わないこと、あいさつとおもてなしの微笑みを絶やさないことなどを教えて頂きました。また、2次面接試験当日は入社試験だと思い、男性も少しお洒落してスーツにネクタイで行くように、と言われました。これらは独学ではなかなか分からず、目から鱗のような思いがしました。

<CELのクラスメートは良き友>

 CELでは、同じ志を抱いた前向きな受講生と巡り合えたのも幸運でした。CEL主催の昼食会などを契機に、受講生同士の緊密な情報交換、授業後の自主勉強会や励まし合いができました。受講生同士の情報交換はとても有意義でした。CELで知り合ったこれらの方々とは、これからガイド活動を進める上で良き友となると思います。

<これからはプロとして研鑽の日々>

 この度図らずも通訳案内士試験に合格し、夢が現実のものに近づきました。これから3月から5月にかけては、通訳ガイド団体の新人研修が目白押しです。このため合格の喜びと共に、日程調整にうれしい悲鳴を上げているところです。

 プロとして自立していくのはさらに険しい道のりとなりますが、あせらずたゆまず「英語を話す親切なおじさん」を目標にガイド技能を磨いていきたいと思います。そして文化を通じた個人レベルの国際交流から、ひいては世界の平和にも貢献できれば幸いです。

 講師の先生方およびスタッフの皆さまには、これまでのサポートを有難うございました。